彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
彼はなんでもそつなくこなす
仁科さんっ!」
「はい・・」
「ちょっと聞いたわよ!営業本部の南野と付き合ってるって!?」
「・・・」
ついに来たよ、この時が・・・
総務部のカウンター越しに、企画室のお局様に睨み付けられながら、みちるはごくりと息を飲んだ。
地味に目立たず過ごしてきた今日までの平凡OL生活グッバイ。
一人胸で黄昏つつ、こくんと頷いた。
もう逃げも隠れも出来ない。
笑うなら笑え!騒ぐなら騒げ!どうにでもなれ!!
「そうですけどっ!」
やけっぱちになって言い返すと、お局様が一瞬黙り込んだ。
「そう・・・」
「は・・はい・・・」
反撃されると思って、覚悟はしていたのだが、罵詈雑言も嫌味も、侮蔑の眼差しも飛んでは来なかった。
拍子抜けな反応に、みちるが恐る恐る尋ねる。
「あの・・ご用件は?」
「食堂で噂になってたから、確認しに来たのよ、で、もう一度訊くけど、南野と付き合ってるのよね?」
「はい・・・」」
「だったら話が早いわ!同期の柿谷、紹介してくれるように南野に言ってくれない?」
「・・・え?」
「ずっとアプローチしてるんだけど、適当にあしらわれてばっかりなのよ。こうなったら回りから固めてやろうと思って」
「は・・はあ・・」
「あと、杉本狙いの後輩もいるのよ。杉本は、合コンに全然参加してくれないし・・・そのあたり、どうなの?」
「・・・ど・・どうと言われましても・・」
「それも聞いといて!」
「はあ・・・」
「後で、あたしのアドレス、社内メールで送るから、よろしくね!」
有無を言わさず手を握られてしまう。
みちるが状況についていけずにぽかんとしている間に、お局様は総務部を後にした。
自分の机から聞き耳を立てていた後輩が、驚いた顔で振り返ってくる。
「先輩・・・ご無事で何よりですけど・・人気者と付き合うと、やっかみだけじゃなくて、色々大変なんですね・・・」
「そ・・・そうらしいわ・・」
よもや片思いの援護射撃を頼まれるとは思ってもみなかった。
三銃士の人気恐るべし・・・
「当分、注目の的ですよーみちる先輩。あたしの同期達も騒いでましたもん」
なんか、ちょっと芸能人みたいですよねー!と身勝手に騒ぐ後輩を見返して、みちるはため息を吐いた。
他人事だと思って・・・と歯噛みしたくなるが、どうしようもない。
だって、好きになったんだから。
「・・・覚悟してるわよ」
ぐっと拳を握って呟いたら、後輩が急に声を上げた。
「あ!噂をすれば、ですよ!南野さん、お疲れ様ですー」
こちらに歩いてくる篤樹を見つけて、後輩が満面の笑みを送る。
篤樹のほうも営業スマイルで答えた。
「山口さん、お疲れさま」
「どしたの?」
「いま、外回りから戻ったんだけど、駅前にメロンパン売りに来てたから」
「え、お土産?」
「山口さんも一緒にどーぞ」
「いいんですかー嬉しい!ありがとうございます!あ、南野さん、私はお二人の味方なんで、みちる先輩が苛められたら、ちゃんとフォローしますから!」
紙袋を受け取りながら、後輩がガッツポーズをする。
「トモちゃん、大げさだから」
呆れ顔のみちるの頭を撫でて、篤樹が穏やかに答えた。
「頼もしい後輩で、心強いよ。もしもの時は、みちるをよろしくお願いします」
「勿論です!」
二人のやり取りをよそに、みちるは小さく肩を竦めた。
どちらかというと、苛められる、より、恋愛相談を山のように受ける心配をしたほうがいいかもしれない。
「はい・・」
「ちょっと聞いたわよ!営業本部の南野と付き合ってるって!?」
「・・・」
ついに来たよ、この時が・・・
総務部のカウンター越しに、企画室のお局様に睨み付けられながら、みちるはごくりと息を飲んだ。
地味に目立たず過ごしてきた今日までの平凡OL生活グッバイ。
一人胸で黄昏つつ、こくんと頷いた。
もう逃げも隠れも出来ない。
笑うなら笑え!騒ぐなら騒げ!どうにでもなれ!!
「そうですけどっ!」
やけっぱちになって言い返すと、お局様が一瞬黙り込んだ。
「そう・・・」
「は・・はい・・・」
反撃されると思って、覚悟はしていたのだが、罵詈雑言も嫌味も、侮蔑の眼差しも飛んでは来なかった。
拍子抜けな反応に、みちるが恐る恐る尋ねる。
「あの・・ご用件は?」
「食堂で噂になってたから、確認しに来たのよ、で、もう一度訊くけど、南野と付き合ってるのよね?」
「はい・・・」」
「だったら話が早いわ!同期の柿谷、紹介してくれるように南野に言ってくれない?」
「・・・え?」
「ずっとアプローチしてるんだけど、適当にあしらわれてばっかりなのよ。こうなったら回りから固めてやろうと思って」
「は・・はあ・・」
「あと、杉本狙いの後輩もいるのよ。杉本は、合コンに全然参加してくれないし・・・そのあたり、どうなの?」
「・・・ど・・どうと言われましても・・」
「それも聞いといて!」
「はあ・・・」
「後で、あたしのアドレス、社内メールで送るから、よろしくね!」
有無を言わさず手を握られてしまう。
みちるが状況についていけずにぽかんとしている間に、お局様は総務部を後にした。
自分の机から聞き耳を立てていた後輩が、驚いた顔で振り返ってくる。
「先輩・・・ご無事で何よりですけど・・人気者と付き合うと、やっかみだけじゃなくて、色々大変なんですね・・・」
「そ・・・そうらしいわ・・」
よもや片思いの援護射撃を頼まれるとは思ってもみなかった。
三銃士の人気恐るべし・・・
「当分、注目の的ですよーみちる先輩。あたしの同期達も騒いでましたもん」
なんか、ちょっと芸能人みたいですよねー!と身勝手に騒ぐ後輩を見返して、みちるはため息を吐いた。
他人事だと思って・・・と歯噛みしたくなるが、どうしようもない。
だって、好きになったんだから。
「・・・覚悟してるわよ」
ぐっと拳を握って呟いたら、後輩が急に声を上げた。
「あ!噂をすれば、ですよ!南野さん、お疲れ様ですー」
こちらに歩いてくる篤樹を見つけて、後輩が満面の笑みを送る。
篤樹のほうも営業スマイルで答えた。
「山口さん、お疲れさま」
「どしたの?」
「いま、外回りから戻ったんだけど、駅前にメロンパン売りに来てたから」
「え、お土産?」
「山口さんも一緒にどーぞ」
「いいんですかー嬉しい!ありがとうございます!あ、南野さん、私はお二人の味方なんで、みちる先輩が苛められたら、ちゃんとフォローしますから!」
紙袋を受け取りながら、後輩がガッツポーズをする。
「トモちゃん、大げさだから」
呆れ顔のみちるの頭を撫でて、篤樹が穏やかに答えた。
「頼もしい後輩で、心強いよ。もしもの時は、みちるをよろしくお願いします」
「勿論です!」
二人のやり取りをよそに、みちるは小さく肩を竦めた。
どちらかというと、苛められる、より、恋愛相談を山のように受ける心配をしたほうがいいかもしれない。