彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
しかも、相手はよりによって、あたしを女小錦、と馬鹿にしている男の子ばかりだった。
背が高くて、かっこいい南野さんは、高校のサッカー部でも大人気なんだと、母が楽しそうに話していた。
練習試合になれば、女子高生がこぞって応援に駆けつけるほどだそうだ。
当時小学生のあたしにとっては、雲の上のアイドルのような存在だった。
そんな彼を前にすると、いくら小錦なあたしでも若干小さくなりたくなる。
意地らしい乙女心というやつだ。
目線を合わせる事も出来ないあたしに、南野さんは優しく話しかけてくれた。
「依子ちゃん、夏休みおじいちゃんのお家行ってたんだよね、川で泳いだ?」
「ううん、依子泳げないから川には行かなかったの」
小さく答えると、南野さんがそっかー、と相槌を打った。
と、そこでそれまで黙っていた悪ガキ共が急に口を開いたのだ。
「依子小錦だから、水に浮かないのー」
「重しもないのに沈んじゃうのー。関取だからー」
あたしの口まねをして、小錦!関取!と騒ぎ始める。
いつもの拳も当然ながら出てこない。
憧れのお兄ちゃんの前で、馬鹿にされたあたしは不覚にも泣きそうになった。
何も言い返すことなんて出来ない。
ただ、一刻も早くエレベーターが止まる事だけを祈っていた時。
南野さんの拳骨が悪ガキ二人の頭へと落下した。
「こら!女の子にそんな悪口言ったらだめだろ!
依子ちゃんは、練習すれば泳げるようになるんだぞ」
背が高くて、かっこいい南野さんは、高校のサッカー部でも大人気なんだと、母が楽しそうに話していた。
練習試合になれば、女子高生がこぞって応援に駆けつけるほどだそうだ。
当時小学生のあたしにとっては、雲の上のアイドルのような存在だった。
そんな彼を前にすると、いくら小錦なあたしでも若干小さくなりたくなる。
意地らしい乙女心というやつだ。
目線を合わせる事も出来ないあたしに、南野さんは優しく話しかけてくれた。
「依子ちゃん、夏休みおじいちゃんのお家行ってたんだよね、川で泳いだ?」
「ううん、依子泳げないから川には行かなかったの」
小さく答えると、南野さんがそっかー、と相槌を打った。
と、そこでそれまで黙っていた悪ガキ共が急に口を開いたのだ。
「依子小錦だから、水に浮かないのー」
「重しもないのに沈んじゃうのー。関取だからー」
あたしの口まねをして、小錦!関取!と騒ぎ始める。
いつもの拳も当然ながら出てこない。
憧れのお兄ちゃんの前で、馬鹿にされたあたしは不覚にも泣きそうになった。
何も言い返すことなんて出来ない。
ただ、一刻も早くエレベーターが止まる事だけを祈っていた時。
南野さんの拳骨が悪ガキ二人の頭へと落下した。
「こら!女の子にそんな悪口言ったらだめだろ!
依子ちゃんは、練習すれば泳げるようになるんだぞ」