彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
勿論、太っていた醜い自分の記憶なんて、抹消してくれて構わない。

幸い何度か彼と社内ですれ違っても気づかれることは無かった。

あれから10年以上たっているし、あたしは中学時代の同級生が見ても同一人物と思われない程度には変身していたのだ。


いつか、彼に告白して、あたしを好きだと言ってくれたら、その時は
昔の事を打ち明けようと思っていた。

あたしを、生まれて初めて女の子扱いしてくれたのは
あなただってんです、って。


あれから、運動して、痩せて、メイクを覚えて綺麗になって
何人もの男の子に告白された。

全盛期の高3の文化祭は、自由時間の殆どが告白タイムだった。

大学に入ってからもサークルの異性ほぼ全員からアプローチを受けた。

恋に憧れた時もあった。

けれど、小錦!とあたしを馬鹿にした悪ガキの事がどうしても、頭から離れなかった。

口では甘いセリフを吐きながら、内心ではあたしを馬鹿にしているに違いない。

そう思うと、誰とも付き合う気にはなれなかったのだ。


だから、恋をするなら、彼とが良かった・・・

だけど、恋は生まれる前に終わった。

< 15 / 80 >

この作品をシェア

pagetop