彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
昔は、人より一歩が遅かった。
いや、重かった、というほうが正確かもしれない。

何せ体が重いのだ。
気持ちばかり先走って、転ぶことが多々あった。

駆け出したつもりが足が上がっていないのだ。

なので、階段から落ちたり、躓くことが多々あった。

昔のあたしの足は少年並に傷だらけだった。

その反動で、ダイエットに成功してから、あたしはスカートばかりを好んで履いた。

昔は絶対に選ばなかったピンクや白の可愛らしいデザイン。

最強に太っていた暗黒時代は、ほぼ母親と同じサイズだったので、母の着古しのデニムの裾を折って遊び着にしていた。

涙ぐましい黒歴史だ。

けれど、今は違う。

道を歩けば大抵の人は振り返るし、常に手入れを怠らない手足はいつでもツルぴかだ。

久々に出来た擦り傷もこの数日で随分きれいになった。

なので、本日もあたしは可愛い系OLのお手本のような格好だ。

シフォンスカートにフレアブラウス、ベージュピンクのパンプスに、リボンモチーフのついたボストンタイプのバック。

このままデートに行けそうな装いだが、本日一緒に食事をする事になった相手は、
今すぐ交通事故であの世に行ってほしい相手NO1だ。

だが、すぐに死んでもらっては困る。
一体どこまであたしの失恋話が噂になっているのか、正確に確認しておく必要がある。

もし、その噂が営業部内だけの事なら、何とかしてねじ伏せる。

先にこちらが別の噂を流してもいい、何なら、告白自体無かったことにして、柿谷さんと噂になる方がまだマシだ。

とにかく南野さんとの事を面白おかしく揶揄されるのだけは避けたかった。




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