彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
かれこれ15分程一人で佇むあたしを、ターゲットに決定したらしい。

これはもう店に入っておくべきだろう。

決心して彼らに背を向ける。
と、同時に声がした。

「お姉さん一人―?彼氏来てくれなかったの?」
「そこの店でいっぱいどーですかー?」
「・・・っけっこう・・」
「ごめん!待たせたね!」

ナンパ男二人組とあたしの間に割り込む形で、もう一人、別の男がやって来た。
柿谷さんだ。

有無を言わせずあたしの肩を抱いて微笑む。

「ナンパなら、他当たれよ」
彼の言葉に、二人組が舌打ちして去っていく。
ほっとしたのも束の間、突然目の前に小ぶりの花束が差し出された。

「お詫びの品です、お姫様」

茶化すように笑う柿谷さん。

思わずあたしは言葉に困る。
男の人から、花束を貰うのなんて、子供の頃のピアノ発表会以来だ。

「これ・・・どうしたんですか・・・」

馬鹿丸出しの質問をしたあたしに、柿谷さんが笑って答える。

「勿論、きみの為に選んだんだよ」
「・・・あたしの・・ため・・・」
「そう」

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