彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
まず感じたのは植え込みの木の枝が肌を刺す感触。
そして、腰からドスンと土の上に落下して、最後に履いていたフレアスカートがバサッと捲れ上がった。
パンチラどころか、目の前に人がいたら、丸見えである。
もう恥ずかしいを通り越して、死にたくなりそうだ。
もし、いまこのタイミングで社員の誰かがここを通りかかったら。
植え込みの中に埋もれている不審な女子社員発見!!
パンツ全開の前転を華麗に披露して、植木に突っ込んだのは、あの、人気新入社員の仁科依子さん!!
いやだ、ありえない、絶対にいやだ。
ないないないない!!
絶対にないし、許されない!!
あたしは、自分の見た目を自覚している。
異性からは高嶺の花として熱いまなざしを向けられ、代わりに同性からは忌み嫌われる。
馬鹿みたいな同性からのイジメの合わないようにする為の、自分のあり方もきちんと理解している。
計算に計算を重ねて、漸くこの自分を手に入れたのだ。
こんなところで、こんな醜態を晒す訳にはいかない。
あたしは必死になって植木の中から出ようともがいた。
この際、引き締め効果のある高級ストッキングはどうなってもいい。
それより、誰か来る前に、あのマンホールのパンプスを持って、ロッカールームに駆け込んで、替えのパンストを持ってトイレに駆け込まなくては。
おちおち泣いても居られない。
美人の涙と言うのは往々目を引くものではあるが、これはあまりに酷すぎる。
泣くにしても、きちんとそれに相応しいシチュエーションがあるのだ。