彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
「あのっ、失恋したって・・・み、南野さんから聞いたんですか!?」
「そーだよ」

あっさり頷いた彼に、あたしはがっくり項垂れる。
南野さんだけは違うと思っていたけれど、やっぱり男はみんな馬鹿で浅はかなのだ。

あたしは泣きたい気持ちをぐっと堪えて、尚も柿谷さんを問い詰めた。

「じゃあ、南野さんは営業部の人達にその話をしたって事ですよね!?
それって何時位のことですか?
誰を中心にその話題になったか記憶にあります?
後、そういう話が好きそうな営業事務の女子社員で誰かわかります?
噂ってとにかく時間が命なんです。
もし、あたしの失恋話以上に面白いネタがあれば、みんな絶対そっちに食いつくから。
どうにかしないと・・・
とにかく、まずは誰と誰を口止めしたら間に合います?
っていうか、もしかしてもう噂が広まってて、あたしが知らないだけ、とか!?」

矢継ぎ早の質問に、柿谷さんは一瞬眉を顰めて、それからあたしの顔をまじまじと見つめた。

「ちょ、ちょっと、待て。落ち着け」

「落ち着いてなんていられません!
人生初の失恋なんですっ!
そりゃあ、勘違いしたあたしが悪いんだけど、でも、あたしも本気で好きだったんだから。
ちょっと早とちりしたけど、それはそれって事で。
今は、あたしのろくでもない噂をもみ消す方が大事です、さあ、教えてください!」

「なんで俺が何か答える前から自己完結してんだよ・・・」

呆れた口調で言われて、あたしは漸く口を閉ざした。

「さっきから、営業部の人達とか噂とか、勝手に慌ててるけど・・・なんか勘違いしてないか?」

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