彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
「・・・え?」

「噂になんてなってねぇよ。
篤樹がそんな事言いふらす訳ねぇだろ。
あのお人好し馬鹿にそんな事できるかよ」

肩を竦めて言われて、あたしは思わず目を見張る。

「ほ、ほんとに!?」

「ああ。だから、管理部の仁科依子が篤樹に振られた事を知ってんのは俺と、口の堅い杉本斗馬だけ」

安心したか?と言われて、あたしは漸く肩の力を抜くことが出来た。
危ない・・・また早とちりするところだった。

「よ・・良かったぁ・・・」

「ちなみに、きみが篤樹の本命の仁科さんを呼び出して、
篤樹に付きまとうな!って勘違いで担架切って、
勝手に玉砕して、公園から逃げ帰って、
その途中でマンホールに靴ひっかけて、勢いよくすっころんで植え込みに突っ込んだことを知ってんのは俺だけ。

ついでに言うと、最初にきみが篤樹の机に置いた置き手紙を、本命の仁科さんからの呼び出しだって篤樹が勘違いして、一人で浮かれてたって事実も俺は知ってる」

「・・・柿谷さんって、やっぱり性格最悪ですね。これだから男はっ・・」

花束以外は全て最低。

ぎろりと冷たい視線を向けると、柿谷さんは心外だというように肩を竦めて見せた。

「一人で失恋の痛手を抱えるのも可哀想かと思って、声かけてやったのに」

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