彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
どこからか、アラーム音が聞こえる。
愛用のスマホのものではない。
慣れ親しんだものとは違う、機械音。

あたしは丸まっていた体を伸ばして、記憶にないアラームをどうにかして止めようとした。
が、枕元をボフボフしても、なにも、無い。

「・・・なーに・・・」

確かに朝には滅法弱い。
化粧に時間がかかるので、早く起きる癖をつけているがなかなか起きられない。
古い携帯と、目覚まし時計のダブルセットで無理やり起きる様にしている。

いつアラーム音を変えたんだろう?
そんなことする余裕なんてあったっけ?

怪訝に思いながら、重たい体を起こす。

と、そこは見知らぬ部屋だった。

一瞬にして目が覚めた。

「こ・・・こ・・・どこぉ!?」

真っ白の糊のきいたシーツ。
ふかふかの羽根布団と枕。
ベッドサイドにはテーブルとイス。
そして、小さな窓から見える景色は、ここが高層階であることを示している。

鳴り続けていたのはベッドサイドのパネルのアラームだった。
ボタンを色々触って、何とかして鳴き止ませる。

「ど、どうなってんの!?」

意味が分からない。

昨夜はたしか・・・
柿谷さんに呼び出されて、居酒屋の個室で食事をして・・

ってちょっと待って!

途中で途切れた記憶を必死に手繰り寄せて、あたしは胸を押さえる。

ここで、漸く最大の異変に気付いた。

あたしが身に着けていたものは、ホテルのバスローブだったのだ。

「!?」

びっくりしすぎて声も出ない。

「う、嘘でしょ!?マジで!?」

慌ててバスローブの紐をほどく、が、当然その下は裸だ。

「えええええええええ!?」

つまり、これって、そーゆうことか!?

バスローブの前を掻き合わせる様にして、あたしは立ち竦んだ。

見知らぬホテル。
裸バスローブ。
乱れたベッド。

導かれる答えは、ひとつ、しか、ない。


「や・・・やっちゃった・・・?」

人生初の、とんだ朝チュンだ。

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