彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
意地悪なの?優しいの?
「いやー、仁科さんが来てくれるなんて」
「まじ感動です!」
羨望の眼差しを一身に受けながら、あたしはにっこり微笑んだ。
お綺麗ですねー。美人ですねー。
その言葉は、どんな美容液よりも女性を美しくする!とあたしは思う。
特定の相手を見つけるための合コンでなければ(ただ誉めそやされて終わるだけなら)参加しても害はないのか・・
あれほど毛嫌いしていた合コンだが、思っていたよりも心象は良かった。
いつものように“綺麗だとか言いながら、裏では別の事考えてんだろが!”とか思わなくて済んだからかもしれない。
と、いうのも、あたしはそれ以外の事に必死に神経をすり減らしていたからだ。
柿谷さんの策略合コンの会場は、駅前のお洒落なバーだった。
メンバーは管理部の先輩とあたしの同期と、柿谷さんと営業部の男が二人。
柿谷さんが連れてきたうちの一人が、どうやら先輩の狙っていた相手らしく、開始早々二人はすっかり意気投合してしまった。
となると、残るメンバーは四人。
あたしは、さっきから柿谷さんに呼ばれるたびなんやかんやと言い訳を付けて、自分の席に留まっている。
前回の事件で、この人の半径1メートル以内は物凄く危険だと判断したからだ。
側に近寄ったら、ぱくりと食べられるに違いない。
「仁科さん、こっちきてお酌してよ」
にこやかにグラスを差し出す柿谷さんに、あたしは自分の席で立ちあがってビールを注ぐ。
「仁科さん、メニュー持ってきて」
「柿谷さん、手、届きますよね?」
問答無用でメニューを突きだす。
といった感じでなんとか前半は乗り切ったが、それも途中までだった。
「工藤と松井さん、隣同士の方がいいだろ?」
松井さんというのはあたしの先輩で、彼女と盛り上がっていたのが営業部の工藤さんだ。
意気投合している二人を近づけてやろうという柿谷さんの有難いお言葉。
今のあたしにとっては、最悪の提案でしかない。
6人がけのテーブルの席で、対角線上に向かい合っていた二人を隣り合わせる為に、柿谷さんが立ち上がる。
「松井さん、こっちどうぞ?」
完璧な流し目を松井さんに向けて、柿谷さんが歩き出す。
勿論先輩は二つ返事で頷いた。
彼女はあたしの隣の席だ。
嘘でしょ!待ってよ!
思わず縋りたくなるが、出来る筈も無い。
ものの数秒でテーブルの回りをぐるっと歩いてきた柿谷さんが、あたしの隣に収まった。
「あれー、仁科さん、緊張してんの?」
「まじ感動です!」
羨望の眼差しを一身に受けながら、あたしはにっこり微笑んだ。
お綺麗ですねー。美人ですねー。
その言葉は、どんな美容液よりも女性を美しくする!とあたしは思う。
特定の相手を見つけるための合コンでなければ(ただ誉めそやされて終わるだけなら)参加しても害はないのか・・
あれほど毛嫌いしていた合コンだが、思っていたよりも心象は良かった。
いつものように“綺麗だとか言いながら、裏では別の事考えてんだろが!”とか思わなくて済んだからかもしれない。
と、いうのも、あたしはそれ以外の事に必死に神経をすり減らしていたからだ。
柿谷さんの策略合コンの会場は、駅前のお洒落なバーだった。
メンバーは管理部の先輩とあたしの同期と、柿谷さんと営業部の男が二人。
柿谷さんが連れてきたうちの一人が、どうやら先輩の狙っていた相手らしく、開始早々二人はすっかり意気投合してしまった。
となると、残るメンバーは四人。
あたしは、さっきから柿谷さんに呼ばれるたびなんやかんやと言い訳を付けて、自分の席に留まっている。
前回の事件で、この人の半径1メートル以内は物凄く危険だと判断したからだ。
側に近寄ったら、ぱくりと食べられるに違いない。
「仁科さん、こっちきてお酌してよ」
にこやかにグラスを差し出す柿谷さんに、あたしは自分の席で立ちあがってビールを注ぐ。
「仁科さん、メニュー持ってきて」
「柿谷さん、手、届きますよね?」
問答無用でメニューを突きだす。
といった感じでなんとか前半は乗り切ったが、それも途中までだった。
「工藤と松井さん、隣同士の方がいいだろ?」
松井さんというのはあたしの先輩で、彼女と盛り上がっていたのが営業部の工藤さんだ。
意気投合している二人を近づけてやろうという柿谷さんの有難いお言葉。
今のあたしにとっては、最悪の提案でしかない。
6人がけのテーブルの席で、対角線上に向かい合っていた二人を隣り合わせる為に、柿谷さんが立ち上がる。
「松井さん、こっちどうぞ?」
完璧な流し目を松井さんに向けて、柿谷さんが歩き出す。
勿論先輩は二つ返事で頷いた。
彼女はあたしの隣の席だ。
嘘でしょ!待ってよ!
思わず縋りたくなるが、出来る筈も無い。
ものの数秒でテーブルの回りをぐるっと歩いてきた柿谷さんが、あたしの隣に収まった。
「あれー、仁科さん、緊張してんの?」