彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
彼なりに手探りでした
“ものすっごい不本意ですけど、ありがとうございました”

依子から届いたメールを見て、貴壱は苦笑いした。
それでも律儀にメールを送ってくるところが彼女らしい。
不貞腐れて渋々文字を打つ姿まで想像できる。

“どういたしまして。お礼に、今度は二人で飯行って”

こういう誘い文句だと、こっぴどくフラれるに違いない。
とは思っても、つい送ってしまうのだから、仕方ない。

依子は、これまで貴壱が知り合ってきた(寝てきた)どの女性とも違う。

貴壱に媚び諂う事も、色仕掛けを仕掛ける事も無い。

思った事をそのまま口にして、真っ向からぶつかってくる。

だから、面白い。

次にどんな反応をするのだろうと期待してしまう。

「ああ、だから手放したくないのか」

毛色の違う猫だから、惹かれる。

下心なしの彼女の本音が、貴壱には心地よかった。

“なんですぐそういう事言うんですか!?”

“飯誘うくらい、いいだろ、だめ?”

フザケナイで下さい!とか言ってくるんだろうな、と返信を待つこと3分。

“考えときます”

予想外の返事に、貴壱は思わず歩みを止めて立ち尽くした。
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