彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
「あの人の恋愛って、適当で、いい加減な気がして・・・」

誰にでも甘い言葉を囁いていそうな軽薄な印象を受ける。
実際、彼は恋愛はゲーム感覚だと言った。

あたしにとって恋は、未だにふわふわの甘い綿菓子のイメージだ。
子供っぽいと笑われる気がして、誰にも言った事はないけど。

「まあ、適当かもしれないけど、でも、一度で良いから遊ばれたい、抱かれたいって女子多いわよー?」

「あ、それ良く聞きます。なんていうか、手の届くアイドル的な感じですよね」

松井さんのセリフに続けて今村さんも頷いた。

「あ、あり得ないでしょ!?」

遊びで付き合って、抱かれる!?
考えられない。

「そういう対象として、あたしが見られてるなんて心外ですしっ・・・柿谷さんに好かれてもちっとも嬉しくないです」

「じゃあ、追いかけられても逃げるんだ?」

「そう・・です」

処女なんて面倒くさい、そういう相手に出来ないなら意味はない。
はずなのに、どうして手放せないのか?

彼のセリフが蘇る。

物珍しさで近づいてきただけ、それだけ。

あたしは唇を噛み締めて、間違いないと頷いた。

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