花束に、気持ちを込めて。
たくみ
そう、口に出してしまうと、何だか、照れくさかった。
ちゃんと相手につたわったかどうかは、分からないけど。
口に出した後、たくみくんが目を丸くしたから、きっと、この声は届いたのだろう。
不思議。
家ではあまり喋らないのに。
人の名前なんて読んだこともなかったのに。
たくみくんって呼べるのが嬉しい。
そう思った。
あれ?
変だ。
匠海くんと話す前は、自分なんて、空気だって。
誰の目にも映ってないって。
そう思ってたのに。
それでいいと思ってたのに。
もっとたくみくんに、あたしを知って欲しい。
空気じゃ嫌、
そう思ってる。
あれ あたし。
たくみくんのことが、好き なの?
詩織が自分の気持ちに気づいた時に、まさかたくみも同じことを考えていたなんて、誰も知るよしもなかった……。