君と計る距離のその先は…

『とりあえず、弁当をドアのノブに掛けておくから飯は食え。』

 どうしていいのか分からない。

 そんなわけの分からないメールを送ったのに橘さんはアパートまで来てくれてお弁当を買ってきてくれたらしかった。

 私が会えないことも承知してくれているようだった。

『すみません。』

『いいから。
 会えないのは分かってて来たんだ。
 つらいなら病院へ行けよ。
 何か考えがあって処方したんだろ?
 偽薬だとしても真野には確かに効いてたと俺は思うぞ。』

 今日は土曜だ。
 仕事をしている人でも通いやすいように土曜も午後からの診察がある。

 橘さんは私の様子がおかしかったこと。
 そこから薬の事かと思って自分も調べたことを教えてくれた。

 そして私を励ますようなメールを送り続けてくれた。

 マイナスな方へ行くと簡単なことも思いつかなくなるからいけない。

 橘さんに指摘されて、やっと気づけた。
 如月先生が考えなしに偽薬を処方したりしない。

 私は勇気を振り絞って病院の予約をした。
 どういうつもりで偽薬を処方したのか、聞いてみないと真実は分からない。

『病院、一人で行けるか?
 俺がいても……ダメだよな。』

『すみません。
 行く時は強めの薬を飲んで行こうと思うので大丈夫です。』

 そこでふと気がついた。

『ご迷惑をおかけしてすみませんでした。
 偽薬じゃない強い方の薬を飲めば済む話でした。』

 手元には『どうしてもつらい時に』と頓服として渡された薬がある。
 これも調べてみたが、こっちは本物の薬だった。

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