君と計る距離のその先は…
仕事が終わって帰ろうかというところで遠くから給湯室へ入っていく橘さんが見えた。
後を追おうとして、呼び止められた。
「真野さん。」
「え?はい。」
通路の角にいたのは宮崎さんだった。
ことの一部始終を見ていたみたいで。
「このまま橘を追いかける気?
やめておいた方がいいと思うけど。」
え?一体、どういうこと?
理解出来ずにいると距離を詰めてきた宮崎さんに言葉を重ねられた。
それは耳元に囁かれた甘い甘い囁き。
「橘で本当にいいの?俺にしない?」
耳を押さえて慌てて後退りすると微笑む宮崎さんと目が合った。
囁かれた耳が熱い。
「橘さんに、お礼を言いに行くだけで。」
「でも、あっ。」
伸ばされた手に捕まえられないように体をかわして給湯室へ向かう。
その体を引っ張られた。