君と計る距離のその先は…
微かに聞こえた給湯室の声。
「俊介……もう、私…無理かも。」
……しゅん、すけ、、。
宮崎さんに引っ張られた体は給湯室の中が一瞬だけ見えて、その後は物陰に連れ込まれてしまった。
「俺にしておきなよ。」
宮崎さんはつかんだ腕をそのまま引き寄せて私を抱き寄せた。
それは給湯室の会話が聞こえないようにわざと耳を塞ぐように覆い被さられた。
でももう遅かった。
一瞬だけ見えたのは大きなガタイいい男性。
あんな体格の人、社内に1人しかいない。
そもそも彼を見かけたから後を追ったのだから、それが誰かなんて分かっている。
そしてその男性に抱き締められている女性。
そんな……どうして………。
頭を左右に振りながら宮崎さんの体を押して抱き寄せられた体を引き剥がした。
「真野さん……。」
切なくて悲しそうな声が余計に現実だと突きつけるようだった。
私は宮崎さんの顔を見れないまま、逃げるようにその場を去った。
給湯室では、橘さんが永島さんを抱き締めていた。