君と計る距離のその先は…

 永島さんは一緒に仕事をしている女性で、クールな感じの人だ。
 仕事も正確で私が避けてしまう橘さんの仕事も率先してやるような人。

 そんな2人が、、。
『俊介』は、橘さんの名前だ。

 永島さんは橘さんを名前で呼んで、橘さんは永島さんを抱き締めていた。

 だって、そんな………。

 私は橘さんの気持ちには応えられない。
 だから誰とどうなったって何か言える立場じゃない。

 けれど、、。
 永島さんは既婚者だ。
 結婚している。

 何か理由があって、抱き締めていただけだよっていう心の声をすごい勢いで上回る考えが取り留めなく浮かんでは消える。

 周りに私のことを触れ回ったのも、私へちょっかいをかけてきていたのも。

 永島さんとの不倫関係が周りバレないように私へのことは全てカモフラージュするための嘘だったんじゃ。

 全部、全部、嘘なんじゃ………。

 そんなわけないって思うのに、抱き合っていた2人の姿が脳裏に何度も何度も再生されて心を蝕んでいく。

 真野が好きだ。

 真剣な表情でそう口にした橘さんを思い出して胸が軋むように痛くなった。
 あの言葉さえも嘘だったのかもしれない。

 けれど私には文句を言う権利なんてない。
 だって私は、橘さんのこと……………。

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