君と計る距離のその先は…
「でも俺からはって!
橘さん、そう言って…。」
「真野からも触れることはないんだろ?」
私からもそう言ったけれど私から橘さんへ寄り添ってしまったことが幾度となくある。
なんて反論していいのか分からなくなって理不尽な思いが口をついて出た。
「永島さんのことは抱き締めるのに。」
さすがにこの指摘には橘さんも狼狽えた表情を見せた。
「あれは……あれは、よろめいた永島を支えただけで。
泣いてよろめいた女性を突き離せるほど冷血じゃない。」
居心地が悪そうに頭をかいて「だから、そういうこと言われると好かれてるのかと思うだろ?」とぼやいた。
橘さんは頭をかいていた腕で顔を隠すようにそっぽを向いた。
「だって私、対人恐怖症で。」
「あぁ。」
「だから付き合うなんて。」
そもそもが無理なんだ。
今はどうやら薬が効いてくれていて平気みたいだけど、いつ怖くなるのか分からない。
そんな私がお付き合いするなんて、、。
「対人恐怖症だから?」
顔を覆っていた腕を外しながら、こちらに体を向き直した橘さんが質問をした。
「えぇ。」
「だったら俺で慣れればいい。
俺に、触れてみる?」
「触れてって………。」
対人恐怖症ってそういうものだっけ?
「手、貸して?」
出せずにいる私の手を強引に取った。