君と計る距離のその先は…
「真野さんはさ。周りがよく見えてるくせに自分のことは見えないのかな。
誰がどう見ても橘のこと好きでしょ。」
「へ?」
私と、それに橘さんの間抜けな声が重なって宮崎さんを笑わせた。
「そんなんだから周りが世話を焼きたくなるんだよ。
橘もしっかりしろよな。」
もう一度、バシッとたたかれた橘さんはよろめいて宮崎さんと交代するように私の隣へ腰を下ろした。
宮崎さんは軽い足取りで去っていった。
「いや、あの、その。」
赤い顔をさせる橘さんに驚きつつ、自分も熱い顔を手で覆った。
「健太にも宮崎と同じ台詞で鼓舞されて、昨日そう言ったのはヤケクソ半分で、その………。」
「暑っ」とジャケットを脱いでネクタイも緩めた橘さんは「とりあえず何か食べよう。もう注文した?」とメニューに視線を落とした。
可愛らしい店内のカウンターはやっぱり狭くて、混んだ店内で橘さんの左腕は私の右腕にぴったりとくっついていた。
そこが熱を帯びて熱い。