君と計る距離のその先は…

 私もメニューを持ってはいたけれど視線は定まらなくて、ぽつりと呟いた。

「ご指摘通りかもしれないです。」

「え……。」

 言葉を失った橘さんが言葉の意味を理解したのかは分からない。
 そんなこと確認できる勇気もない。

 隙間のない2人の距離。
 その距離から橘さんが不意に私を覗き込んで、そっと唇に触れるくらいのキスをした。

「……ッ。」

 橘さんは顔を片手で覆って、けれど隠しきれていない顔は真っ赤だ。
 私だってきっと同じか、それ以上に赤いと思う。

「ごめん。まずい。連れ去りたい。」

 そこから何も話せないでいる私達の元に宮崎さんが頼んだらしい商品が届いて、それをお持ち帰り用に包んでもらって店を出た。

 本当に連れ去られたみたいな気持ちになって胸は高鳴りっぱなしだ。

 外に出て人通りの少ないところまで来ると橘さんは立ち止まった。

「ん。」

 包んでもらった袋を差し出されて橘さんを見上げた。
 あんなにいつも真っ直ぐに見つめていた橘さんは顔を背けている。
 その顔はまだ赤いまま、耳まで赤い。

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