君と計る距離のその先は…
「このまま一緒にいたら本気で連れ去りそうだから、真野は職場に帰りな。」
すごい口説き文句を言われた気持ちになって、私も赤い顔を俯かせた。
そして差し出された袋からサンドイッチが包まれた包みを1つ取り出した。
「私はこれだけいただければ大丈夫です。
お仕事、忙しいんですよね?
抜け出して来なくても、私……逃げたりしませんよ。」
橘さんの予定は終日外出で直帰だった。
宮崎さんがからかい半分なのか、応援からなのか、私とランチ中だと橘さんに連絡したんだと思う。
精一杯の笑顔を向けると手が伸びて頭を数度撫でた。
「あんまり可愛いこと言わないで。
抱きしめて離したくなくなる。」
何かを振り切るように去っていく橘さんが振り返って告げた。
「真野、えっと、その、あとでメールするから見て。」
踵を返した橘さんが今度こそ去って行った。