君と計る距離のその先は…

 エレベーターは一階に着いて私はよろめいてエレベーターを降りた。
 乗り込む人の波に押され、彼との会話は続けられない。

 ドアが閉まっていく向こう側で私だけに分かるように自分の胸ポケットを指し示して微笑みを向けられた。

 ウィンクか投げキッスでもしかねない甘い雰囲気の橘さんに目眩がしてエントランスに設けられたソファによろめく体を預けた。

 鞄の中で携帯がメールの受信を伝え、業務連絡でも使ったことのないメールが送られていた。

 送り主はもちろん『橘俊介』
 橘さんって俊介さんなんだと変なところで感心していると開いたメールの内容を見てギクリとした。

『一瞬、ホッとした顔してたろ。』

 図星をつかれ慌てて訂正メールを送る。

『そんなことありません。
 ただ、お仕事忙しそうですし、またの機会にした方が…。』

 何を取り繕って…。
 別に気がないのは本当で彼にそう思われた方がいいわけで。

 自分の行動に嫌気がさしていると橘さんからすぐに返信が来た。

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