君と計る距離のその先は…
「俺は、さ。
苦手なのに頑張って俺へ話しかけてくれた真野にグッときた。
今までも壁にぶつかったり、へこたれそうになった時にあの時の真野が思い浮かぶ。」
そんな大層なものじゃない。
私は全然………。
橘さんの腕の中で頭を左右に振る私に橘さんはフッと息を吐いて私の頭にキスを落とした。
「今の俺があるのは真野、お前のお陰だ。」
橘さんの優しい声を聞いて涙がこぼれた。
流れ出ると止められなくて、私はしゃくり上げるように泣いた。
「泣くことないだろ。
ほら。こっちおいで。」
頬を伝う涙を拭って甘やかすように私を体ごと抱き寄せた。
橘さんの膝の上で私は小さな子どもみたいに丸くなって橘さんに身を委ねた。
「泣き虫な真野もツボだけど。」
そんな憎まれ口を言う橘さんが甘く甘く囁いた。
「真野、好きだよ。」
私を覗き込むように体を屈めると頬の涙にそっとキスをして、それから唇にも優しく重ねた。
何度言われても胸は鼓動を速めて胸の奥がキュッと切なくなる。