君と計る距離のその先は…

 目の前の如月先生はいつも通りの先生に見える。
 私は思い切って思ったままを口にした。

「如月先生のことは、先生としてしか知らないので分かりませんが、、。
 私に「原因を思い出して」と言われた意味は分かりました。」

「……どういう意味だと?」

「初めの頃、私が病院に通うまでになった原因をお話しした時に如月先生はおっしゃいました。
『苦手』の裏返しは『興味がある』のだと思うよ。と。
 今はその意味が分かる気がします。」

「そう。」

 私の応えた言葉で如月先生に伝わったみたいだ。
 私には満足げに頷いたように見えた。

 私は改めて頭を下げて「失礼します」とドアに手をかけた。
 そこで思い浮かんでいたことをこの際だから言っておこうと思って振り返った。

「それから。
 如月先生が如月薫としてただの男性だとして。
 たぶん如月薫さんの心の中にはどなたかが住んでいらっしゃるので患者さんには横恋慕しないと思います。」

 これには面食らった顔をした如月先生が笑って、それからやっぱり満足そうな顔をした。

「そう?
 真野さんはよく見てるんだね。」

「フフッ。どうでしょうね。
 では、失礼します。」

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