君と計る距離のその先は…

『それは真野の優しさなんだろうけど、今の俺には優しくないな。
 何時でも待ってますって言ってくれた方が仕事、頑張れる。』

 な、そんなこと言えるわけない。
 どうやって返信しようかと頭を悩ませていると再び彼からメールが入った。

『冗談。真野に帰られないうちに急いで片付ける。
 今から取引先と打ち合わせだからしばらく連絡出来ない。ごめん。
 今日は俺の奢りだから好きなの頼んでろよ。』

 たくさんの文句が頭に浮かんで携帯をおでこにコツンと当てた。

 そんなこと言われたら帰れないよ。
 ずるい。


 会社を出ると再び橘さんからメールが入った。

 打ち合わせ、大丈夫なのかな。
 連絡出来ないって言ってたのに。

 そんな心配はメールを読んで吹き飛んでしまった。

『店、選べなくてすまない。
 昨日の居酒屋に行っててくれ。
 可愛い真野には似合わない場所なのが申し訳ない。』

 よろめいた体が道行く人にぶつかりそうになって慌てて「すみません」と頭を下げた。
 火照る体は一気に顔を熱くさせた。

 どんな顔して、このメールを打ったのよ。

 そんな憎まれ口が浮かんでは消えた。
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