君と計る距離のその先は…
28.ある日の昼食

 橘さんとお付き合いを始めたことはもちろん会社の人達には秘密。
 でもこれも結局、公然の秘密というやつらしくて、たぶんみんなが知っている。

 ただ、前のように何か言われるようなことは無かった。

「ほら。真野ちゃん。行くよ。」

「あ、はいっ!」

 私はお弁当片手に急いで、声を掛けてくれた上川さんの後に続く。

 途中の休憩室で宮崎さんや健太さん達と一緒にお弁当を広げている橘さん達の近くを通った。
 こちらには気づいていないみたいだから、気づかれないように静かに歩く。

「いいよなぁ。橘は。
 弁当作ってくれる彼女がいて。」

 うわっ。お弁当の話題!
 恥ずかしくて俯きながら足早にその場を去った。

 外食が多い橘さんの為に自分のついでだからとお弁当を作ることを申し出た。

 出過ぎた真似をしたかな?と心配していたけど、前に「真野が弁当作ってくれる」と嬉しそうに話しているのを聞いて安堵したのだけど……。

 宮崎さんに「橘がノロケ過ぎてうざい」と苦笑混じりに言われて今はどうしようか思案中で……。
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