君と計る距離のその先は…

「真野ちゃん?
 平気?何か考え事?」

 いつの間にか合流していた永野さんに指摘されて「あ、いえ。平気です」と顔を上げた。

 最近はもっぱら上川さん、永野さんとご飯を食べている。
 お忙しい2人は社食のことが多く、そんな2人に誘われて私も食堂でご一緒させてもらっていた。

 今までは自席で1人食べていた。
 今、思えば何かを頑なに守っていたような気がする。

 人が怖いから人から離れていればいいとばかり思っていて。

 人はまだ怖いけど……。
 仲良くなって、その人に慣れれば心は疲れたりしない。

 まだまだ人見知りだけど、誘ってくれたお二人には随分と心を許しているような気がする。

「俊……いや、橘がね。」

 永野さんの言い直した言い方に心が痛んで慌てて言った。

「気を遣わせてしまって、ごめんなさい。
 気にしないで今まで通り呼んでください。」

 永野さんは私の言葉に軽やかに笑った。

「嫌よ。
 未だに真野が俺のこと名前で呼んでくれないって嘆かれる身にもなってよ。」

 上川さんも隣で笑っている。

「呼べばいいのに。
 まぁ俊介ってより橘って顔だけど。」

 上川さんは結婚して尾上さんに変わったけど会社では上川さんのまま。
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