君と計る距離のその先は…
「真野ちゃん変わったね。」
「案外、橘もやるよね。」
「いやいや。
私達の力も少なからずあるでしょ?」
「フッ。そうね。」
2人が顔を見合わせて笑い合って、そんな話をしているのも知らず、私は自分を鼓舞していた。
大丈夫。怖いのは最初だけ。
向こうの方がもっと怖いんだから。
仲良くなったら、きっと平気。
こんな風に勇気を出そうと思えたのは1人じゃないから。
私はきっと上川さんと永野さん、それから橘さんに甘えてる。
でも甘えていい関係に甘んじていいんだって気づけた。
それは私にとってすごい進歩で、そして私はきっとそれを返していけるって思えてる。
自分なりの方法で、きっと……。
ポケットに未だに入れている錠剤をギュッと握りしめて、私は浜田さんが座る席の隣に立った。
「あ、あのね。
……良かったら、一緒に食べない?
あと2人来るんだけど、優しい先輩だから。
と、隣に座っていいかな?」
顔を見て言えなくて、浜田さんより私の方が先輩なのに脚が震えた。
「え、えぇ。はい。」
驚いたような小さな声が聞こえて安堵すると腰を下ろした。
「良かった。緊張しちゃった。」
赤くなっているであろう顔を押さえていると浜田さんは隣で小さく笑った。
「真野さんって、、面白い方ですね。」
うわっ。なんだかすごく嬉しいかも。
今日はいっぱいいっぱい橘さんにギュッってしてもらおう。
橘さんに甘えられると思ったから頑張れたんだよって。
そしたらきっと「頑張ったのは真野自身だろ?」って言うんだろうな。
そんなことを思うだけで、私の心に温かいものが広がっていった。