君と計る距離のその先は…
「それは、ご自由に、どうぞ。」
「うん。ご自由にって俺もそう思ってたんだけど。」
橘さんは私の手を取って指先にキスをし始めた。
そして悩ましいことを口にした。
「真野に名前で呼ばれるのは、きっと特別な気がする。」
「それは、その………。」
返答に困っていると橘さんはもっと困ることを言った。
「俺の心臓の音を聞いて。」
ゆっくりと隣へ体を転がした橘さんに抱き寄せられて私の顔は胸元にうずめさせられた。
トクトクトクと少し早い心臓の音。
未だ緊張するんだよってことを伝えたいのかな?
「疲れたろ?
俺も眠いから昼寝タイムにしない?」
そっか。
寝室に連れてきたのはその為……。
安心からドッと疲れが出て急激に眠さが押し寄せた。
心音を聞かせたのは私を安心させる為なのか、よく分からないけど、安心できて私はすぐに眠ってしまっていた。