君と計る距離のその先は…
急激に恥ずかしくなって両手で顔を覆うとその手にキスを落とした橘さんが「穂花、可愛い。穂花、俺に顔を見せて」と囁いた。
「や、だ。」
「いいから。真野?」
いつもの呼び方になった橘さんにハッとして、おずおずと手を下ろした。
すると、ため息混じりに「穂花って呼ばれるの嫌?」と言われた。
「違うけど……恥ずかしくて。」
「俺もその恥ずかしさを味わいたいんだけど。
呼んでよ。名前。」
そんなこと、急に言われても………。
何が何だか訳が分からなくて、真剣な眼差しの橘さんに押されて、たどたどしく口にした。
「………俊介、さん。」
片手で顔を覆った橘さんは「本当だ。滅茶苦茶恥ずかしいわ」と苦笑した。
それから顔を見合わせて笑い合った。
「ごめん。
ちょっと、、突っ走った。
俺、真野が可愛くて歯止めを効かせるのが難しい。
って言われても困るよな。」
自己完結した言葉になんて答えていいのか困っていると橘さんが頭をクシャリとしてから続けた。
「指輪を見に行ったのは生半可な気持ちじゃないって分かって欲しかったから。」
「橘さん……。」
「一緒に住もうって言ったけど、だらだら同棲するつもりなわけじゃないから。
近いうちに挨拶に行きたい。」
「それって、、、。」
「結婚前提にって。
同棲するなら、そのくらいのことしないとダメだろ?
親になんて言うんだよ。引っ越すのに。」
「それは、そう、ですけど。」
夢見心地な一緒に暮らせたらいいねっていうくらいの発言かと思っていたのに。