君と計る距離のその先は…
4.真っ直ぐな気持ち
1分が1時間に感じられる中、しばらく待っているとお酒が運び込まれた。
私はお酒で手に握りしめていたものを流し込んだ。
「おい。真野、何してんだ。」
突然、声を掛けられて思いっきり咳き込んだ。
変なところに薬が入っちゃったらどうしてくれるのよ!
ゴクリと喉を薬が通過したことを感じて気持ちが大きくなると、心の中で悪態をついた。
「悪い。いきなり声掛けたりして。
それ、酒だろ。薬をアルコールで飲むなんて正気の沙汰じゃねぇ。
おい。聞いてるか?」
途中から笑えてしまって笑い出した私に橘さんは眉をひそめた。
「何がおかしい。」
「だって橘さん、真面目。」
「馬鹿。心配してるんだぞ。
酒で飲んだりしたら効き過ぎて良くない。」
「よく効いた方がいいじゃないですか。」
今日は特に。
早くよく効いて欲しい。
額に汗を浮かばせている橘さんは息をついて私の向かいの席に座った。
「風邪ひいてたのか。
俺、また無理強いしたな。
正直な気持ちとしては、まだ帰らせたくないんだか…。」
「平気ですよ。薬も飲みましたし。
それよりそんなに急いで来なくても。」
額の汗は走ってきたことを物語っている。
私の何気ない一言に橘さんはハハッと軽い笑いを吐いた。
「居ないんじゃないかって気が気じゃなくて。
真野の前じゃ余裕ないわ。俺。」
髪にクシャリと手を入れた橘さんが苦笑いを浮かべた。