君と計る距離のその先は…
頭が混乱して戸惑っているうちにもう一度顔が近づいてきて咄嗟に体が動いていた。
私の振り上げた手の平は橘さんの頬へクリーンヒットした。
乾いた音と共に手の平にジンジンとした痛みが走る。
目の前の整った顔立ちは痛みに歪んだ。
「イッテ。
お陰で酔いがさめた。」
頬に指を当てて顔をしかめた橘さんは、それからすぐにいつもの顔に戻って私など素知らぬ顔で座敷の方へ戻っていく。
やっちゃった…。
先輩を叩いちゃったよ。
と、いうよりも今の何?
息苦しくて息を止めていたことに気づくと、はぁーっと全部を出し切った。
息を吐いたところで戸惑いは無くなってくれない。
「今の何?」
声に出してみても答えは誰も教えてくれなかった。
……私、
橘さんにキスされたー??
叫びたい気持ちも何もかもを飲み込んで崩れるようにしゃがみ込んだ。