君と計る距離のその先は…
「弱りましたね。」
如月先生の表情で橘さんとの接触をよく思っていないことが伺えた。
先生は絶対に頭ごなしに否定はしない。
けれど今までの診察の中で一番『やめてほしい』というのが態度に現れていた。
先生の態度から先生の気持ちを読み取ると何も言えなくなってしまった。
黙っているとフッと表情を緩めた先生が励ますように言った。
「私には思ったことをなんでも言ってください。
真野さんはそろそろ、ココを卒業できるくらいまで来ていました。
真野さんなら私に思っていることをきちんと伝えられますよ。」
私は深呼吸を2度してから私の中でもまだ定まっていない思いを口にした。
「如月先生がいつか、おっしゃっていました。
苦手意識があるものに少しずつ挑戦して克服することで自信に繋がると。」
「えぇ。言いました。」
ニッコリと微笑んだ先生に安堵して私は続けた。
「だから、もう少し彼を知ってみたいと思っています。」
口に出して初めて気づく自分の思い。
私は橘さんのことをもっと知りたいと思ってる。