君と計る距離のその先は…

「今から化粧するならハリウッド映画の特殊メイク並みの化粧だよな。」

「フッフフッ。なんですか。それ。」

「ハハッ。笑った。
 真野の笑い声って聞いてるだけで幸せな気持ちになるよな。」

「そ、そんなこと、真面目なトーンで言わないでください。」

 電話で良かったことが1つ。
 真っ赤になる顔を見られないで済むこと。

 電話で困ったことが1つ。
 耳に当てて話していたせいで耳元で甘く囁かれたみたいに胸が高鳴ってしまったこと。

「朝が早くて、心にしまっておくつもりのことも声に出ちゃってるよな。」

「おとといから隠すつもりありませんよね?」

 今度はこちらが不服そうに訴えれば、戯けたような声で「ハハッ。バレてるな」と言われた。

「真野?」

「はい。」

「真野?」

「ん?なんですか?」

「真野?」

「もう。なんですか?」

「いや、呼んでみたら、呼ぶ度に声がどんどん可愛くなるから止められなかっただけ。」

 ぶわっと顔が熱くなるのが止められなくて、鼓動は猛スピードでフル回転する。

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