君と計る距離のその先は…

 着いたのは駅からほど近い可愛らしいお店。

 橘さんとではこういうお店には来られないだろうな。
 橘さんなら居酒屋だろうな。

 そんな思いが浮かんでつい笑えてしまった。

「何?何か楽しいことでもあった?」

 宮崎さんに不思議そうに聞かれて首を横に振った。

「いいえ。なんでもありません。」

「何かなぁ。気になる。」

 宮崎さんとは気負わず、くだけて話せる。
 彼の持って生まれた才能なのか、柔和な雰囲気がリラックス出来て、さりげない気配りもあるのが一緒にいて心地いい。

「最近、橘と仲がいいらしいね。」

「仲がいいというか。」

「橘が強引に誘ってるんだろ?」

 頷いていいのか分からなくて曖昧に微笑んで誤魔化した。

「珍しくあいつがご執心だからさ。
 俺も真野さんに興味が湧いて。」

「はぁ。」

 そんな理由で誘われたんだ。
 まぁそんな理由がなきゃ誘われないよね。

 彼は女性には事欠かない。
 常に誰かと噂になっている。
 それも社内でも有名な美人さんとばかり。

 だから余計に気負わないのかな。
 私のことは眼中にないだろうって思うから。

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