君と計る距離のその先は…

「元々、可愛い子だなぁとは思ってたけど。」

 息を吐くようにお世辞を口にする宮崎さんに感心する思いだ。

「そんなこと言われてもどう返していいのか困ります。」

 お世辞と分かっていても「ありがとうございます」とはさすがに言えない。

 宮崎さんはフフッと笑ってとんでもない質問をしてきた。

「橘は真野さんに可愛いなんて言うの?」

「それは…。」

 口ごもったことで彼には正解が導き出せてしまったらしい。
 勝手に決めつけられて話は進んでいく。

「言うんだ。へぇ。意外。
 俺の前じゃ鬱陶しいくらいに言うけどね。
 真野が可愛い。真野が可愛いって。」

 橘さんたら宮崎さんに何を言っているんだろう。
 本人に言われたわけじゃないのに、顔が熱くなる。

 橘さんって恥ずかしいって気持ちはないのかしら。

 私が1人動揺していると、不貞腐れたように宮崎さんが口を挟んだ。

「なんだか妬けちゃうな。
 俺が可愛いって言った時よりも橘がそう言ってるって言った時の方が顔が赤くなった。」

「そ、そんなこと…。」

「好きなの?」

「そうじゃありません!」

 どうして如月先生といい、宮崎さんといい…。
 男性も案外、くっつけたがりなのかしら。


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