君と計る距離のその先は…

 私の動揺と同時期に電話の向こう側で何か大きな音がして、橘さんの「イッテー」といううめき声が聞こえた。

「イテテ。あれ。朝?
 真野に電話、あれ、携帯。
 あぁ、ん?え。あれ。真野?」

「はい。おはようございます。」

「あぁ。俺、いつの間に真野に電話した?」

「え?それは内緒です。」

 クスクス笑う私に橘さんは文句を言うどころか「いい夢見たなぁ」なんて呟いている。

「どんな夢ですか?」

「内緒。」

 うん。私も聞かない方がいいと思う。
 聞いたらまた赤面しなきゃいけないと思うから。

 電話を切るとすぐにメールが届いた。
 それを見てフッと笑みをこぼす。

 これで昨日のことが少しだけチャラになった気がした。

< 52 / 192 >

この作品をシェア

pagetop