君と計る距離のその先は…
けれど。
私は頑張っていない。
橘さんが覚えてくれているのが2年前というのなら、入社そこそこの頃。
それから四苦八苦した結果、対人恐怖症。
みんなに馴染んでと言ってくれた、橘さんに映る私は薬で誤魔化した偽物の真野穂花だ。
私ではあるけれど、本当の私じゃない。
きっと本当の私は2年前から何も変わっていないどころか……。
『悪い。変なこと言ったかな。
勝手に俺が真野の姿に元気付けられてただけだ。忘れてくれ。
また、飲みに行きたいな。
宮崎に負けてられない。』
茶化した誘いメールにトクンと胸が温かくなる。
それと同時に先ほど小さく胸が痛くなった理由が分かって嫌気が差した。
私は彼の好意の厚意から来る行為に甘えてる。
わざとややこしく思い浮かべてハハッ私みたいと、嘲った。
ややこしい私の頭の中は彼の『好意:好きという気持ち』の『厚意:思いやり』から来る『行為:行動』に甘えている。
橘さんが私にガッカリして私を構わなくなったら寂しいなんて勝手な気持ち、真っ直ぐぶつかってくれている橘さんに失礼だ。
『早く嫌いになってください。』
急激に落ち込んだ私はこの上なく面倒なメールを送った。
いっか。面倒で。
それで嫌われても構わない。
これ以上、橘さんが心に住みついてしまう前に。