君と計る距離のその先は…
二年前。
俺は仕事が重なってダウン寸前だった。
それでもそれを他の奴に見せるわけにもいかなくて残業して誰もいなくなった社内のデスクに突っ伏していた。
「あの。大丈夫ですか?
良かったら、これ。」
しくじった。まだ誰か残っていたのか。
そんな思いでいた俺の目の前に可愛い包みが転がって目を見張った。
『おつかれ』『ありがとう』『がんばれ』
様々な文字が並ぶそれらは俺には到底似合わない可愛らしい包み。
マジマジと見ていたらしく彼女は弁解した。
「あ、あの。
私、話すのが苦手なので。
飴のコメントに頼ろうって。
なのに、誰にも渡せなくて。」
その一つをつかんで口に入れた。
甘くて優しい味が口に広がって、飴以上に何かが胸にゆっくりと降り積もっていく。
それはふんわりと温かい。
「ありがとう。
お世辞抜きで命の恩人だわ。」
飴玉に頼っても誰にも話しかけれないような奴が突っ伏してた俺を心配して話しかけるなんて。
それも見た目で距離を取られるような俺に……。
彼女の優しさと、丸文字の『がんばれ』が心に染みていく。