君と計る距離のその先は…
13.叶わない片想い
「そうでしたか。
出来なかったことに目を向けるのではなく出来たことを一つずつ確認して自分を褒めましょう。」
私はどうにか病院に来られていて、如月先生の穏やかな声に包まれていた。
誰にも会いたくないのに、先生に会えるのはどこか心待ちにしていて、いざ先生に会えると胸の高鳴りを覚えた。
「どうしました?真野さん?」
「すみません。大丈夫です。」
「では、まず何が出来ましたか?」
先生と順番に確認して、そうしているうちに気持ちも穏やかになっていく。
いつもの薬も緩やかに効き始めてくれたおかげもあるかもしれない。
先生にすがりたい気持ちが起きないわけじゃないし、先生に恋心を抱いたのも両手で足りないくらい数え切れない回数だ。
会える日を指折り待っていた時期もある。
けれど、それは初診の時に間違えないように話があったこと。
そもそも『如月薫』という名前と美人さんな外見から女性だと思っていた。
対ヒトが苦手な私はその中でも男性は特に苦手だった。
だから女医さんを探していた。
ネットで何軒か探して目ぼしい病院をチェックした中の一つに『如月こころのクリニック』はあった。
当時は医院長の紹介ページの写真を見て、女性だと思い込んで予約をした。
初診の時に男性と発覚した時は病院を変えようとまで思った。
いくら美人さんでも男性だ。
しかしそれは如月先生の穏やかな雰囲気と注意事項を言われた為に思い留まることになって今まで通い続けている。
注意事項はこんな風に切り出された。