君と計る距離のその先は…

 橘は良くも悪くも真っ直ぐで、今回はこれが裏目に出ていた。
 昨日、休んだ真野さんに良からぬことを口にする彼女達の話がたまたま聞こえてしまった。

 もしかしたら彼女達は橘に聞こえるように話していたのかもしれない。

「真野さんってさ。
 急に休むこと多くない?」

「そうそう。最近は橘さんに気に入られてるからって、行動が目に余ってるし。」

 自分の行動を絡めて、想いを寄せている子の悪口を言われれば黙ってられないのは分からないでもない。
 特に橘の場合は。

「言い掛かりはよしてくれ。」

 橘は真っ直ぐに彼女達へ抗議を始めた。

「橘さん……。」

「俺が勝手に真野のことが好きで、真野に迷惑を掛けてるだけだ。
 真野はしっかり仕事をしてる。」

 ブレない真っ直ぐな橘に感嘆する思いだった。
 けれど、彼女達からしてみれば面白くないわけで。

「だからっていい大人がすぐ休みます?
 昨日、夜遅くに橘さんとコーヒーショップにいたのを見た人がいるんです。
 そんなことして休まれても、ねぇ?」

 橘の苛立ちは嫌というほど伝わってきて、壁を殴ったりせずに我慢しただけでも偉いと思う。

「だから!
 それも俺が無理に、、誘ったんだ。
 俺が無理させた。
 非難するなら俺にしてくれ。」

 吐き捨てるように言って橘は立ち去った。


 そんなことがあった橘に今回の給湯室へ行かせるわけにはいかなかった。
 これだけで事態が好転するとは思っていないが………。

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