君と計る距離のその先は…

 動揺する私を尻目に宮崎さんは至って普通に私へ質問を向けた。

「最近、橘と何かあった?」

「何かって、、何もないです。」

 橘さんの元カノに会わせられるのに、その上、尋問までされて……。
 宮崎さんってこんな人だったっけ?

 醸し出す雰囲気は確かに穏やかで、けれどにこやかに笑う笑顔の奥には捕らえた獲物を逃さない狡猾で獰猛なハンターの鋭さが見え隠れしているような気さえする。

「じゃ、言葉を変えようかな。」

 宮崎さんはテーブルの上で手を組んだ。
 その美しい指先を見つめながら宮崎さんが口にする続きを待った。

「橘は最近、寝てないみたいだ。
 あいつ、すぐに自分を追い込むストイックなところがあるから。
 悩み事は寝て無くすタイプらしくて。」

 寝不足。
 それは前回の資料室でも思ったこと。

 けれど宮崎さんの言い方ではこうなってしまう。

「それなら……悩みがないってことですか?」

『寝てない』はきっと大袈裟に言ってるだけ。

 橘さんは悩みがなくて寝る暇もないほど毎日が楽しそうって言いたいのかな。

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