君と計る距離のその先は…
ゆっくりと襖が開いて………。
「えっ。上川さん!!」
私は驚きから上川さんと宮崎さん、交互に見比べて、それからお辞儀して去っていく店員さんに形ばかりの会釈をした。
「お疲れ様。体調はもういいの?」
「はい。おかげさまで。」
上川さんは綺麗系の美人さんでストレートヘアーが美しい仕事も正確な……つまり知っている人だった。
同じ部の人だ。
私が休む連絡を入れた時に電話を取ってくれた人。
「驚いた?私も驚いた〜。
橘の変わり様に。」
カラカラと笑う上川さんに緊張が解けていく。
美人さんで近寄りがたいと思っていたのに、実はこっそりオヤツをわけてくれる優しい人。
チョコに飴に、クッキー、グミ、ラムネ。
それもこっそり「真野さんだけよ」なんて甘い囁きも添えてくれるものだから異性だったら惚れていると思う。
それでいて怠けている人には手厳しく注意もする私の憧れの人だ。
その上川さんが橘さんの元カノだなんて………。
美女と野獣の感じが似合い過ぎるほど似合っている。
しかも不男の野獣ではなくて、男前の野獣なのだから本当、お似合いだ。