君と計る距離のその先は…
気まずい関係になっていることはこの際、脇に置いておいて。
だってやっぱり私も橘さんが倒れていないか、生存確認したいくらいには心配だった。
インターフォンを押して、しばらく待っていると想像していたよりも早く返事があった。
「はい。」
低くて少し不機嫌な声。
その声に私は自分の名前を名乗った。
「真野です。」
「……は?」
驚きが混じった声にもう一度、名乗る。
「真野です。」
「どうして………。」
宮崎さん達と決めた台詞を口からスラスラと伝えた。
「宮崎さんが橘さんが死にそうだから様子を見に行ってくれって。
これでお前への借りはチャラだからって。」
「ッ。あいつ……。」
「私は宮崎さんへ借りがあって今回のことでチャラにしてもらいました。」
「ここに来ることで?」
「えぇ。
なので入れてくれないと困ります。」
宮崎さんに言われた言葉が頭から離れてくれない。
「男なんてみんな、好きな子の前だと虚勢を張りたくなるんだよ。
だから弱みを見せたくない。
なのに唯一、弱みを見せられるのも好きな子の前だけだったりするんだよね。」
「なぞなぞですか?」
すぐには理解できなかった宮崎さんの言葉。
じわじわ後から意味がぼんやり分かってきて、なんだか心をつかんで離さない。