君と計る距離のその先は…

 インターフォンからは橘さんの苦悩しているような声が聞こえた。

「無理。
 分かってんの?男の部屋に一人で来て。」

「だって私達には約束があります。」

「……俺からは触れない?」

「そうです。」

「真野からも触れることはないだろ。」

「それは、、分からないです。」

 深いため息が聞こえて、私は橘さんの返事を待った。
 部屋に入れてもらうことが無理だったら私は帰ればいいのかな。

 そんなことをぼんやり思っていた私の耳に思い掛けない言葉が届く。

「分かった。……入れば?」

 嘘、でしょ?
 だって、それって、、お泊り決定?

 あれ?私達って気まずい雰囲気で1日過ごしませんでした?
 私の思い違い?

 私が戸惑っていると、ドアが開いて俯いた居心地の悪そうな橘さんが立っていた。
 橘さんは私よりも、もっと戸惑っているような声で不平を訴えた。

「俺の気持ちを弄んでるだろ。」

 私は出来る限り平然と言った。

「なんのことでしょう。」

「俺、真野のこと好きなんだけど。」

「……ッ。」

 不意打ちを食らって顔が急激に熱くなる。
 だから、いつでもどこでも言えばいいというものじゃない!

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