その笑顔、私のモノ
5分ほどドライヤーを当てていると、腕が重くなってくる。
まだ乾いてないけど、もういいや…
私は乾かすのを諦めて、ドライヤーのスイッチを切った。
そのままソファーに座って、何気なくテレビをつけて見る。
すると…どのくらいたったのか分からないけれど、漣がお風呂から出てきた。
リビングのドアが開く音がしたので、パッとドアの方を振り向く。
グレーのバスローブを着て、バスタオルで髪を拭きながら入ってくる。
毛先に水滴がついていて、少し色っぽい。
「あ〜!!
彩子ちゃん、髪まだ濡れてるじゃん!
乾かすの諦めちゃったの??」
色っぽい雰囲気なのに、喋るとそんな雰囲気どこにも無い。
そんなギャップがあるのが漣なんだけど…
優しい笑顔で、私が諦めてそのままにしてあった、ドライヤーを手に取る。
「ほら、やってあげるから!」
“おいで”と言うように、漣はダイニング用の椅子の後ろに立つ。
私はやってくれるなら…と、そんな気持ちで漣のいる椅子に座る。
ちなみに、いつも乾かしてもらう時はこの体制だ。
座れるところで、コンセントが届くのがここしかないっていうのもあるけど…。
私が座ったのを確認してから、ブォーっとドライヤーが再び音を立てた。
優しく私の髪をすくいながら、乾かしていく。
時々、耳に触れる漣の指がくすぐったい。