その笑顔、私のモノ



「丸山さん。会議室に来てもらえる?」


パソコンに向かってカタカタと打ち込んでいると、同じ部署の先輩の山本さんに呼ばれた。

さっき渡した資料がダメだったのかな…?

そう不安になる。
ちなみに、私はイベントの企画をする仕事をしている。


「分かりました。」


途中まで打ち込んであったページを保存してから、手帳とケータイを持って席を立つ。

先に会議室に入っている山本さんを追うように、私も会議室に向かった。

会議室はすぐ近くにあるから、そんなに時間もかからずに部屋に着く。

外からは見えないようになっていて、扉には使用中の札がかかっている。

私は、ガチャっとドアを開けて、中に入った。

その瞬間…

腕を引っ張られて、気づけば抱きしめられていた。


「彩子ちゃん…!!
ほんとにすごいよ。あんなイベント思いつくなんて、絶対に成功させようね!」


山本さんは、ぎゅーっと、私をキツく抱きしめたまま、興奮したように言う。


「あぁ…うん。とりあえず、離して。」


ここが会社だと言うこと、絶対忘れてたでしょ…
でも、さっきの資料がダメってわけではなかったみたいなので、良かった。


「うわぁぁ…彩子ちゃん!ごめんね!」


泣きそうな顔になりながら、私を離す。
ちなみに、この抱きついてきた山本漣と私は付き合っている。
普段の仕事中はすごくしっかりしていて、頼りになるから、付き合い始めた頃はこんな性格だとは思わなくて、びっくりした。でも、もう慣れた。


「ここ会社だから、バレたらどうすんの?」


告白された時に条件として、みんなに秘密にする。と約束して付きあったからだ。

仕事もできて、頼りになる漣と私なんかが付き合ってるなんて知られた日には…

考えただけでも怖い。

< 2 / 59 >

この作品をシェア

pagetop