その笑顔、私のモノ
「丸山さん。会議室に来てもらえる?」
パソコンに向かってカタカタと打ち込んでいると、同じ部署の先輩の山本さんに呼ばれた。
さっき渡した資料がダメだったのかな…?
そう不安になる。
ちなみに、私はイベントの企画をする仕事をしている。
「分かりました。」
途中まで打ち込んであったページを保存してから、手帳とケータイを持って席を立つ。
先に会議室に入っている山本さんを追うように、私も会議室に向かった。
会議室はすぐ近くにあるから、そんなに時間もかからずに部屋に着く。
外からは見えないようになっていて、扉には使用中の札がかかっている。
私は、ガチャっとドアを開けて、中に入った。
その瞬間…
腕を引っ張られて、気づけば抱きしめられていた。
「彩子ちゃん…!!
ほんとにすごいよ。あんなイベント思いつくなんて、絶対に成功させようね!」
山本さんは、ぎゅーっと、私をキツく抱きしめたまま、興奮したように言う。
「あぁ…うん。とりあえず、離して。」
ここが会社だと言うこと、絶対忘れてたでしょ…
でも、さっきの資料がダメってわけではなかったみたいなので、良かった。
「うわぁぁ…彩子ちゃん!ごめんね!」
泣きそうな顔になりながら、私を離す。
ちなみに、この抱きついてきた山本漣と私は付き合っている。
普段の仕事中はすごくしっかりしていて、頼りになるから、付き合い始めた頃はこんな性格だとは思わなくて、びっくりした。でも、もう慣れた。
「ここ会社だから、バレたらどうすんの?」
告白された時に条件として、みんなに秘密にする。と約束して付きあったからだ。
仕事もできて、頼りになる漣と私なんかが付き合ってるなんて知られた日には…
考えただけでも怖い。