その笑顔、私のモノ


「1年って覚えてたの?
秘密にしていたのにはびっくりだけど…しょうがないから、許してあげる!」


漣に言われるまで、私は付き合って1年になることを忘れていた。
だから、恥ずかしさと嬉しさを隠すように、そう言った。
自分でも感じるくらい顔が暑くなっている。


「じゃあ、もうすぐ始まっちゃうし、行こう」


漣はそう言って、私を促すように車を降りた。
並んで、駐車場からお店に向かって歩く。
甘い雰囲気は一切なかったのに、二人は自然と手をつないだ。

外で手をつなぐなんて久しぶりすぎて、恥ずかしい。
漣をチラッと見上げてみると、漣も私のほうを見ていた。
その瞬間、パチッと目が合って恥ずかしくなり目をそらす。


「…っ!」


同じタイミングで、同じことをしていたなんて、恥ずかしくも嬉しくもある。
お店に入るまでは、長いようであっという間だった。


「彩子ちゃんは何が見たい?」


漣は、今日のスケジュールが書いてあるボードの前で止まって、私に聞いてきた。

正直、見るのはなんでもいい…
漣と一緒に居られるから。
そう思っても、私の性格だと…けして、その言葉を口にはしない。

スケジュールボードを見てみると、ちょうど10分後に始まるのがあった。
それに、ちょうど見たかった映画だ。

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