その笑顔、私のモノ
その事を私に言えずに、密かに連絡とっていたの?
私には滅多に連絡してこないのに…
そんなに好きなら、そっちに行けばいい。
気持ちがどんどん溢れて、泣きそうになってくる。
だけど、気持ちは止まってくれなくて…
「漣のバカ!!」
少し先でまだ電話をしている漣に向かって、そう叫んだ。
気持ちが爆発して、言いたいことが沢山あるのに、出てきたのはこの一言だけだった。
私の声が聞こえたのか、「えっ?」と言う顔をした漣にくるりと背を向けて、走り出した。
「えっ、あっ、ちょっ!彩子ちゃん!?」
いきなり走り出した私にびっくりしたのか、漣は驚いたような声を上げてその場で唖然としていた。
漣の声が聞こえても、私の足は止まらなかった。
知らない場所なのに、全力で走っている。
しばらく走り続けて、いつの間にか自分がどこにいるのかも分からなくなっていた。
追いかけてきてくれないんだ…
徐々に走るペースがゆっくりになっていく。
息を切らしながら、気持ちが落ち着いてきて冷静になると、涙が止まらなくなっていた。
「ふぇぇ…」
誰もいない道に、私の泣き声が響く。
どこに行けばいいのかも分からず、ついに足も止まってしまった。
この年で迷子になるなんて…そんなことを考える余裕もない。