その笑顔、私のモノ
「あ、彩子ちゃん…起きた?」
開かない目を擦りながら、ぼやけた目を開けた。
「まあ、とりあえず、彩子を泣かすなら俺が貰うから。」
まだ、頭が回っていないのに、そんな声が聞こえてきた。
ん?…聞き間違い…?
この声は遥人の声だ。
遥人は幼なじみだし…
あれ?
頭の中がぐちゃぐちゃしてる時に、もう1つの声が聞こえた。
「はぁ?ふざけんな。彩子ちゃんは僕のだし!
お前になんか、渡すわけないだろ!
とにかく、さっさと彩子ちゃん離せ!」
喧嘩越しのその声には、ものすごく聞き覚えのある声だ。
でも、こんな言葉使いじゃないはず…
呼び方とか、ちょっと弱そうに聞こえる所は当てはまってるんだけど…
しだいに、ぼんやりしていた目も、見えるようになってくる。
聞こえてくる声が、想像している人であって欲しいような…ないような…
違ったら、寂しい気持ちもあるし、そうであっても気まずい…
だけど、見えてきたその人は、私が想像していたその人だった。
「れん…」
まだお酒が回っていて、呂律の回らない言葉が出る。
じーっと漣を見つめる。
「彩子ちゃん?帰ろ?」
さっきまでの、怒ったような口調では無く、優しく言った。
でも、こんな気持ちのまま、帰りたくない。